researching

5月 08 2012

帰納推論

広義の帰納

「不確実な状況において,知識を拡張する推論過程すべて」

帰納推論の手順

  1. 事例の観察
  2. 事例に基づいた一般化と仮説の生成
  3. 観察事例に基づいた仮説の検証
  4. 仮説保持/修正/新仮説生成のいずれかの選択

仮説検証

ウェイソン2-4-6課題とよばれる実験がある.

  1. 2ー4ー6という数字の並びにあるルールが隠れていることを被験者に伝える
  2. 被験者にはそのルールに対する仮説を立てそれに従う3つの数字の組みを作らせる(このとき,仮説としたルールもメモさせておく)
  3. 作成した3つの数字の組が正解となるルールに合致しているかどうかが被験者に伝えられる
  4. 被験者が「ルールを見ぬいた」と確信した場合,そのルールを報告させる
  5. 正解であれば実験終了,不正解であれば2.へ戻る

被験者の多くは初め「2ずつ増える偶数」と考えるが,それが間違いであることを告げられると「2ずつ増える数」と考え始める.それも違うと言われると被験者はまた別の仮説を立てるが,「有能な被験者は」,それの反証となるような3つの数字の組を作成するようになるという.ウェイソン2-4-6課題の正解は「単に増加する数」である.

カテゴリーに基づく帰納(category-based induction)

  • 一般帰納:あるカテゴリーの特徴を,そのカテゴリーを包含するさらに上位のカテゴリーにも適用する,という帰納(カナリアには羽毛がある,よって鳥類には羽毛があるだろう).確証度を上げる要素に以下のようなものがある.
    • 現象1:前提の典型性
    • 現象2:前提の多様性
    • 現象3:前提の単調増加性
    • 現象4:結論の特殊性
  • 特殊帰納:あるカテゴリーの特徴を,同レベルの抽象度をもつ別のカテゴリーにも適用する,という帰納(ツバメもタカも羽毛がある,よってスズメにも羽毛があるだろう).確証度を上げる要素に以下のようなものがある.
    • 現象5:前提と結論の類似性
    • 現象6:前提の多様性
    • 現象7:前提の単調増加性

類似ー被覆モデル(similarity-coverage model)

一般帰納・特殊帰納の両者における確証度だけでなく帰納推論の確証度を,被覆度(coverage)によって説明する.被覆度とは,前提が,前提と結論を両方含むカテゴリーをどの程度網羅しているか,その程度を表す量である.

犬にも猫にも肝臓がある→哺乳類には肝臓がある,という帰納より,犬にもクジラにも肝臓がある→哺乳類には肝臓がある,という帰納の方が確証度が高い.これは「哺乳類」というカテゴリーに対する網羅の度合いが後者の方が高いからである.

(出典: amazon.co.jp)

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ウェイソン選択課題から導かれる様々な推論バイアス

4枚のカードが用意され,表裏に書かれた事柄が用意されたルールに従っているかどうかを確かめるためにはどのカードを裏返せばよいかを考えさせる問題を「ウェイソン選択課題」と呼ぶ.この課題から人の推論に見られる様々なバイアスが導かれてきた.これらをまとめておく.できるだけ一般的に説明してみた.

確証バイアス(confirmation bias

人は仮説をテストする際に,仮説に反する証拠を探そうとはせず,仮説を支持する証拠だけを探す傾向がある.すなわち,与えられた仮説pqを証明するために「反例となる可能性のある事柄を調べ,それが反例ではないことを示す(つまりp¬qが存在しないことを示す)」必要があったとしても,これを行うよりも「pであるとき確かにqであった」という事例を集めようとする.この傾向を確証バイアスという.

マッチング・バイアス(matching bias

仮説として示された因果関係pqが,要素として否定形を含む場合を考える.「緑であれば,赤でない」などの場合,p:=緑である,q:=赤でない,となりqr:=赤であるとすると¬rである.これを否定形を含むという.このとき,確証バイアスの考え方に従えば人はp¬rの事例を集めようとするはずであるから,pである場合と¬rである場合を調べ,そこにp¬rが成り立っていることを確かめようとするはずである.しかし,後件(¬rの側)に否定形が含まれる場合,人はpr¬rではない)を調べる傾向があることが分かった.これは,条件文に登場する項目であるpr(例では「緑」と「赤」)という概念に一致するものについて純粋に調べるという傾向であるため,マッチング・バイアスと呼ばれる.

情報獲得理論(information gain theory

人は最も情報量の多い証拠を探しているという考え方から,ウェイソン課題において「どのカードを裏返すか」がそれによって得られる情報量の期待値(期待獲得情報量;expected information gain)によって決められているとする考え方を情報獲得理論という.確証バイアスによる選択は,pおよびqの生起確率が比較的小さいという仮定のもとでは期待獲得情報量が論理的に行うべき選択(ウェイソン課題における正解)よりも大きくなることが条件付き確率の計算によって示された.(Oaksford & Chater, 1994

主題内容効果(thematic content effect

ウェイソン選択課題において,並べるカードにかかれた事象をそれぞれ単なる記号から現実世界に実際に存在する具体的な事象へ置き換えた場合,正解率が上昇するという実験結果が出た.ここから,「内容が具体的であれば人はその因果関係についてより正確に把握しやすい」という傾向は主題内容効果と呼ばれる.

記憶手がかり説(memory cuing

主題内容効果に対して,さらに「具体的であるだけでは不十分で,それが過去の経験の中に存在した要素によって構成されていることが正解率に貢献する」という条件を付加したのが記憶手がかり説である.

ここで,抽象的な文字や数字によって構成された課題や,人の自由な振る舞いに関して記述した課題は直接法(indicative)条件文と呼ばれる.それに対し社会規範や道徳的ルールをベースとしたような条件付けがされている課題を義務論(deontic)条件文という.主題内容効果が発揮されるのは主に後者と考えられる.

実用的推論スキーマ(pragmatic reasoning schema)

義務論条件文のウェイソン課題における主題内容効果を説明する概念.実用的推論スキーマとは,日常生活の経験から帰納的に学習された原因と結果に関する思考様式であり,「もし行為*Aが許されるためには,前提条件Bが満たされなければならない(許可スキーマ)」といった形をとる.これは記号的な条件ほど抽象的でないものの,現実に経験したことそのものではない(そこから帰納され,思考様式として抽象化されたもの).

*「行為」「実行」はギリシア語で「プラグマ」

社会契約説(social contract theory)

進化心理学者レダ・コスミデスは,義務論条件文のウェイソン選択課題が高い正解率となるのは,許可スキーマによってではなく「裏切り者を検知する(detecting cheating)」ための「生得的な心の仕組み(innate algorithms)」によるものだと説いた.これを社会契約説という.「もし利益を得ているならば,その対価を支払っていなければならない」という条件の検証機能を人間は進化の過程で生得的に持つようになったという考え方.コスミデスの研究については Gigerenzer & Hug, 1992; Platt & Griggs, 1993 などにより追試が行われてきた.また高野ら(2001)の追試では社会契約説よりも実用的推論スキーマ説の方が妥当であったという結果が報告された.

二重過程理論(dual process theory)

マッチング・バイアスを発見したエヴァンスさんたちは,人間の推論が二つのフェーズからなると考えた.一つは「直感的で,ヒューリスティックな過程」で,もう一つは「意識的で,分析的な過程」であるとした.マッチング・バイアスはヒューリスティック過程で生じると考えた.このように人の思考が二重の過程に分けられるとする考え方は他にもある.

  1. 高速・並列で自動的なシステム1(潜在的過程)
  2. 低速・経時的で注意の容量を要するシステム2(顕在的過程)

の2つに分けて考えた例もある.知覚されたものが潜在的過程(直感)によってある程度おおまかに理解され,それが顕在的過程(推理)によって思考のなかに立ち上がる.コンピュータはいわばこの「潜在的過程」が欠如しており,基本的にセンシングされたものが高度な計算処理に直接入力される.画像認識においては事前に入力に対して制約を与えることで潜在的過程の役割を知覚の段階よりも前に実行している場合が多い.しかしこれは実世界のノイズにあふれた予測不可能な入力に対して対応することの難しいフレームワークであることは言うまでもない.実世界で適応的に視覚認知を行うロボットや視覚情報システムによっては,ヒューリスティックな過程を導入することが重要な意味を持つだろう.

(参考:認知心理学

5月 01 2012

エドワード・リードのアフォーダンス解釈

「エコロジカルな心の哲学」のなかでエドワード・リードのアフォーダンス解釈が、その実在性に関してギブソンのそれとは異なったものとなっている点が指摘されていた。この「リアル」というものの考え方の違いが少し分かりにくかったのでここにまとめておく。

ギブソンの「リアル」

ギブソンが述べるアフォーダンスには、クルト・レヴィンの誘発特性やクルト・コフカの要求特性とは異なり、「主観性」は含まれない。しかし、「知覚者との関係」には関わる。例えば、ある物体が食べられるかどうかは「食べたいかどうか(主観性)」とは関係なく、それがその生物にとって「食べ物として成り立つものであるかどうか(関係)」によって決まる。またある動物がある面の上を歩けるかどうかは、その動物がその面の上を「歩きたいかどうか(主観性)」とは関係なく、その動物の身体機能にとってその面が「歩くことが可能な面かどうか(関係)」によって決まる。

つまり、アフォーダンスは主体がどう思おうと、主体と対象のあらゆる物理特性によって決定されてしまうということである。これにより、アフォーダンスと主観的な「これなら可能だ」という考えは異なることがありえる。これをアフォーダンスの知覚に失敗する、という。

哲学における実在(reality)とは、「主観性や意識から独立に存在するもの」という意味である。実体(substance)は個別化された基体のことを指す。つまり、実体は実在するが、実在は実体でなくてもよい。同様に、主観は関係から影響を受けるが、関係は主観と独立に決まってもよい。よって、アフォーダンスが個別的で関係的であっても、主観とは独立に実在できる、というのがギブソンの主張である。

リードの解釈

リードはアフォーダンスの個別性を、動物の個体それぞれではなく種ごとのものとして考えたため、これによって各個体の個体性にとっては独立でもよいということになり、若干ギブソンの述べていない性質が加えられてしまう。ギブソンは、各個体ごとにアフォーダンスそのものが変化すると考える。各個体の身体機能によってアフォーダンスは異なってくる。

また、ギブソンのアフォーダンスはそれが気づかれていようと、そうでなかろうと存在する。そしてそれは動物の各個体との関係性によって決まっている。これがギブソンの「リアル」であるが、リードはリアルを「動物の知覚や行為によって現れる(現前化する)こと」という意味で捉えている。

ギブソンの「リアル」は「主観的でない」ということだが、リードの「リアル」は「潜在的でない(知覚された)」ということである。この点が異なる。

4月 25 2012

確率論の基礎メモ

誰かに確率論をザックリ紹介するときのテンプレ。


事象と確率変数と実現値

何かの確率を考えるためには、まず何かが起きなければならない。しかし、何が起きてもいいわけではない。考える確率の対象となる出来事を決めておく必要がある。この、確率を考える出来事の集合を事象と呼ぶ。

この事象の中にある色々な出来事から、一つの出来事が起こったとする。この時起こったことの内容そのものを指すのが、実現値の役割である。そして「何になるか分からないけど事象の範囲内のどれか」という形で、つまり出来事のどれかが入る入れ物としてだけ定義されているのが、確率変数である。

箱の中から数字の書かれたカードを取り出す、という事象を考える。このとき、取り出すまでどんな数字が現れるかは分からないが、「カード」という存在は考えることができる。そしてカードには必ず何かの数字が書かれているわけである。すると、「出てくる数字」という概念を変数として表すことができる。これは実際に書かれた数字(実現値)の入れ物なので、確率変数と呼ぶ。ここで、「カードを取り出す」という操作は試行と呼ばれ、確率変数を具体的な何かの値(=実現値)に決定する。

今、箱のなかに何枚のカードが入っているかは分からないとする。しかし、$N$回の試行の結果、1〜Mまでの色々な自然数が出たとする。「出てくる数字」という概念、つまり確率変数を$X$とし、実現値である数字$x_i$が出た回数(すなわち$X=x_i$となった回数)を$c_i$と書くことにすると、ある数字$x_i$が出る確率$p(X=x_i)$は以下のように表せる。

$$p(X=x_i)=\frac{c_i}{N}$$


同時確率と周辺確率

数字の書かれた箱からカードを取り出し、そこに$x_i$という数字が書かれているというのが、未知の数字$X$が$x_i$になること、と捉えて、その確率を$p(X=x_i)$と書くことができた。では、この箱が$L$個並んでいるとしよう。選ばれる箱を$Y$と抽象し、$y_j$という箱が選ばれたということを$Y$が$y_j$になったということと考える。

さて、$L$個の箱からどれかを選んだ結果、$y_j$という箱を選んだという回数を$r_j$とする。$N$回箱を選択する試行をしたとすると、$y_j$が選ばれる確率$p(Y=y_j)$は

$$p(Y=y_j)=\frac{r_j}{N}$$

である。そして全体の試行の中で、結果的に「$y_j$という箱から$x_i$という数字を引いた」回数を$n_{ij}$とすると、この確率は以下のようになる。

$$p(X=x_i,Y=y_j)=\frac{n_{ij}}{N}$$

これを同時確率(joint probability)という。分母が$N$になっているため、全ての試行のうちで、単に結果が「$X=x_i,Y=y_j$となる」確率を表している。では、「選ばれた箱$y_j$はなんでもいいから、とにかく数字$x_i$が出る」という確率はどうなるだろう。これは、上記$p(X=x_i,Y=y_j)$で表される同時確率を、あらゆる$y_j$の場合について足しあわせてやればよい。「どの箱を選ぶか」は独立だから、($y_1$の箱を選び$x_i$が出る確率)+($y_2$の箱を選び$x_i$が出る確率)+…を計算すれば、箱がなんであれとにかく$x_i$という数字が出る確率が分かる。この確率$p(X=x_i)$は、以下のように表される。

$$p(X=x_i) = \sum_{j=1}^{L} p(X=x_i,Y=y_j) = \sum_{j=1}^{L} \frac{n_{ij}}{N}$$

これを周辺確率(marginal probability)とよぶ。これは「確率変数$Y$について周辺化した」ケースといえる。ある確率変数の周辺確率は、その確率変数以外の確率変数について全ての範囲で同時確率を足しあわせた結果である。


条件付き確率

では、「どの箱を選ぶかわからない」という状況下ではなく、「ある箱$y_j$を選んだ」という前提条件のもとで、数字$x_i$が出る確率を考える。これは、箱$y_j$が選ばれた回数$r_j$の中でさらに取り出した数字が$x_i$だった確率だから、

$$p(X=x_i|Y=y_j)=\frac{n_{ij}}{r_j}$$

と表される。これを条件付き確率(conditional probability)と呼ぶ。分子の$n_{ij}$は、全試行のうちで$X=x_i,Y=y_j$となった回数を表す。色々な箱の場合を含めて$X=x_i$が出る確率を考えるよりも、$Y$は$y_j$である、という前提のもとで$x_i$が出る確率を考えるので、これは同時確率よりも大きくなると思われる。以下の式を見るとわかりやすい。

$$\frac{n_{ij}}{r_j} = \frac{n_{ij}}{N} \frac{N}{r_j}$$

$\frac{n_{ij}}{N}$は前述の同時確率である。全試行の回数$N$よりも、箱$y_j$を選んだ回数$r_j$はおそらく小さい。すると$\frac{N}{r_j}$という比率は1よりも大きくなるであろうから、この条件付き確率は同時確率よりも大きくなることが予想できる。さらに、この式からは条件付き確率と同時確率のあいだの関係が見えてくる。

\begin{eqnarray} \frac{n_{ij}}{r_j} &=& \frac{n_{ij}}{N} \frac{N}{r_j} \\ \frac{n_{ij}}{r_j} \frac{r_j}{N} &=& \frac{n_{ij}}{N} \\ p(X=x_i | Y=y_j)p(Y=y_j) &=& p(X=x_i,Y=y_j)\end{eqnarray}

つまり、条件付き確率にその条件の周辺確率を掛けると、同時確率になる、というわけである。ここで、簡単のため$p(X=x_i)$を$p(X)$などと書くと、周辺確率と条件付き確率の話は以下のようにまとめられる。

\begin{eqnarray} p(X) &=& \sum_Y p(X,Y) \\ p(X,Y) &=& p(X|Y)p(Y) \end{eqnarray}

1つ目を確率の加法定理(sum rule)、2つ目を確率の乗法定理(product rule)と呼ぶ。


ベイズの定理

この加法定理と乗法定理および、対称性$p(X,Y)=p(Y,X)$を用いると、乗法定理の左辺を$p(Y,X)$とし、これを$p(Y|X)p(X)$と置き替えて、

\begin{eqnarray} p(Y|X)p(X) &=& p(X|Y)p(Y) \\ \Leftrightarrow p(Y|X) &=& \frac{p(X|Y)p(Y)}{p(X)} \end{eqnarray}

となる。これがベイズの定理である。これの意味するところは、「数字$x_i$が出たとき、それが箱$y_j$から取り出されたカードに書かれている数字である確率」を、「箱$y_j$から数字$x_i$を取り出す確率」と$X,Y$の周辺確率から求めるというものである。まず、「どの箱を選んだか」の確率は、何も数字が引かれる前なら端的に$p(Y)$と表現される。これを事前確率(prior probability)と呼ぶ。しかし数字$x_i$がでた後は、この確率は$p(Y|X)$となる。数字が決定すると、それによって「数字を引く前、どの箱を選んでいたか?」という選択肢は左右される。これを事後確率(posterior probability)という。


独立

さて、それぞれの箱に入っている各数字の書かれたカードの枚数が互いに異なっている場合は、どの箱を選ぶかによってどの数字がでやすいかは変わってくる。しかし、全ての箱に同じ割合でそれぞれの数字が書かれたカードが入れられているとすると、どの数字が出たかとその時どの箱を選んでいたかは関係がなくなる。どの箱を選んでいようとある数字がでる確率は同じということになるため、でた数字からどの箱だったか、を推測することはできなくなる。このとき、$p(Y|X)=p(Y)$となる。すなわち、$p(Y,X)=p(Y)p(X)$が成り立っているため乗法定理が

\begin{eqnarray} p(Y,X) &=& p(Y|X)p(X) \\ \Leftrightarrow p(Y)p(X) &=& p(Y|X)p(X) \\ \Leftrightarrow p(Y|X) &=& p(Y) \end{eqnarray}

となるわけである。

1リアクション

4月 11 2012

視覚的断崖

ギブソンの行った実験で、視覚的断崖とよばれる有名な実験がある。それは、載っても割れない頑丈なガラス板を橋のように縁と縁のあいだに渡して、一方の縁のそばに幼児をおいて反応を見るものである。幼児は手でガラスをたたきはしたものの、大人とちがってその上に載ろうとはしなかった。この実験結果についてギプソンはこう述べる。「おおかたの赤ん坊は手でガラスをたたいたりはしたが、ガラス板の上に載るという危険を官そうとはしなかった。赤ん坊は、身体を支えてくれる透明なガラス板のアフォーダンスを誤って知覚したが、これは驚くには当たらない」。この実験結果は、人聞は断崖のアフォーダンス(「落下」)を生得的に知覚できる可能性を示唆している一方で、強化ガラスのアフォーダンス(「人聞が載れる」)については、学習されなければならないことを示している。

(出典: amazon.co.jp)

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アフォーダンス

アフォーダンスの知覚とは、その環境中の対象が「何であるか」についての知覚である。対象が「何であるか」についてはさまざまな仕方でとらえることができる。たとえば、対象を量子場のレベルでとらえることもできれば、もっとマクロに原子の集合体としてとらえることもできれば、化学的なレベルにおいてある種の分子配列としてとらえることもできるだろう。アフォーダンスとは、それらの把握よりもはるかにマクロな、生態学的レベルでの対象の特性である。それは、動物にとって意味ないし価値(反価値もふくめて価値と呼ぼう)のある対象の特性でる。 出典:エコロジカルな心の哲学
対象は、それが何を為すか what it does を提供する。なぜなら、”それが何を為すか”ということこそが、”それが何であるか what it is”にほかならないからである。たしかに、わたしたちは、それが何かを物理学的物理学 physical physicsによって定義するよりは、生態学的物理学 ecological physicsによって定義するのである。それゆえに対象は、そもそも、意味や価値を有している。 出典:生態学的視覚論

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アフォーダンス

着想

  • クルト・レヴィン(ゲシュタルト心理学者)の「誘発特性(Aufforderungscharakter)」
  • クルト・コフカの「要求特性(demand character)」
コフカは「水は私達に飲んでくださいと語り,雷は怖がってくださいと語り,郵便ポストは手紙を出すことを誘いかけ,ハンドルは握られるのを望んでいる.様々な事物はそれらを用いて成すべきことを私達に語りかけている」という.

以下はギブソンが提案したアフォーダンスの例.

1. 姿勢や移動に関連する、面と「面の配置」
  • その上に立てる面(支持面)は、休息をアフォードする。
  • その上を歩ける面は、H歩「F をアフォードする。
  • 垂直にたちあがった堅い面、すなわち障壁は、衝突や移動の妨害をアフォードする。
  • 障害物のあいだの隙間や空き地は、移動をアフォードする。
  • 切り立った場所や崖っ縁は、地面との衝突による負傷をアフォードする。
  • 崖の突端のあいだは(幅によるが)、跳ぶことをアフォードする。
  • 段差のある場所は、降りる(昇る)ことをアフォードする。
  • 上に座れる面(座ることをアフォードする)。
  • その上に立つことができる物(たとえば、踏み台)は、高い所に手を崩かせることをアフォード する。
  • 登ることのできる配置(木・梯子・階段)。
  • その下に潜り込める面は、避難場所(屋根)をアフォードする。
2. 隠さない面と隠す面(透明か不透明か)
  • 遮蔽面には、遮蔽縁(スクリーン・壁・葦・衣類)がある。不透明な面。
  • 隠さない面(ガラス)。
  • 生活体を他者から隠すことをアフォードする場所。
  • ある対象を他の対象から隠すことをアフォードする、場所や配置。
3. 操作やそれに関連する活動をアフォードする対象
  • 把手(持ち運べる対象に付着した、掴める対象)。
  • 握り(移動させられない配置に付着した、掴める対象)。
  • 俸(あるいは、熊手)。細長い、堅い物は、速くの物に手を出す(あるいは、手を出して操作する)ことをアフォードする。
  • 木の枝(霊長類に、樹上生活では身体の支持をアフォードする)。
  • 投げることができる物、飛び道具。
  • 打ち付けることをアフォードする物、すなわち、根俸・金槌。
  • 切ることをアフォードする物、すなわち、ナイフ・斧(鋭い二而角の刃をもっ)。
  • 突き通すことをアフォードする物、すなわち、針・給。
  • 結ぶこと、束ねること、むち打つことをアフォードする物、すなわち、糸・革紐・縄・撚り糸。
  • 栓で塞ぐことをアフォードする物、すなわち、凹部にちょうど填りそれを満たす凸部。
  • 有用な物の支持をアフォードする面、すなわち、作業台・棚・食卓。
  • 地面を転がることをアフォードする物。
4. アフォーダンスをもつ物質
  • 注ぐこと、滴り落ちること、はね散らすことをアフォードする物質。液体。
  • 塗ること、描くこと、作図することをアフォードする物質。粘性物質。
  • 手先の操作によって形づくられることをアフォードする物質。可塑性・可圧延性物質。
  • その形状が変わることに抗する物質。形と大きさを維持する固体。いわゆる物体。
  • 栄養摂取をアフォードする物質や物体。食物。
  • 病気をアフォードする物質や物体。毒。
5. 負傷や恩恵のアフォーダンス
  • 崖の突端は、落下をアフォードする。
  • 壁は、衝突をアフォードする(が、登ることをアフォードする場合もある)。
  • 飛行物の接近(すなわち、H ルl ミング-85ET)は、負傷をアフォードする。
  • ナイフの刃は、触れてケガすることをアフォードする(が、何かを切ることもアフォードする)。
  • 火は、触れて火傷を負うことをアフォードするが、暖かさをもアフォードする。
  • へピは、噛まれることをアフォードする。
  • 深い水たまりは、溺れることをアフォードするが、浅い水たまりは水浴びすることをアフォードする。

(出典: amazon.co.jp)

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ギブソン知覚論における「記憶」

ギブソンは知覚を構成するための内的過程の不在を説く直接知覚論をとなえたが,認識において「過去経験との照らし合わせ」のような過程が存在しないとなると,この論における「記憶」とは一体どのように説明されるのだろうか.

ギブソンによれば,知覚は環境に注意を向ける行為であって,表象を「所有」することではないという.つまり,「知覚に記憶は必要ない」というのである.つまり,過去経験との照らし合わせによってものを認識するというのは,知覚が成立したあとのことで,知覚すなわち「なぜ事物が,そう見えているように見えるのか(Why do things look as they do?)」は,記憶なくして説明されねばならないということなのである.

しかし過去において気づけなかったような特徴に気づくことができるようになる,といった知覚の発達は確かにある.これは記憶による学習のようにも思える.しかし,これも必ずしも「記憶,像,エングラム,あるいは痕跡に依存すると考える必要はない 」.「視覚の気づき」の発達は,知覚の内容が豊かになるということではなく,また経験によってよりよく推論するようになった結果というわけでもなく,ただ「知覚行為が的確になった」ということなのだという.つまりギブソン的知覚=情報抽出/選択という行為,が「洗練されていく」ということであり,表象を所有したことによってなんらかの処理過程/演算機能が高度化したということではない,ということである.

(出典: amazon.co.jp)

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睡眠と意識

睡眠を考えるとき,「意識がある状態」とはすなわち”外界からの刺激に応じてこれに注意を向けたり,適切な行動を選択して対応することができる状態”である.つまり睡眠中は「ほとんど意識が無い」ということになる.

ヒトは眠るときノンレム睡眠とレム睡眠(瞼の下で目が動く現象”Rapid Eye Movement”の略)を交互に繰り返す.睡眠時間が長くなるとレム睡眠の時間が増えていく.レム睡眠中は脳は活発に働くが,前頭前野の一部のように思考や判断に関わる部分は機能低下し,感覚器官からの入力も視床の段階でブロックされる.

夢遊病
深いノンレム睡眠中に歩きまわったり料理をしたり,車を運転したりなどといった行動を行うことを夢中遊行と呼ぶ.ノンレム睡眠であるため脳全体の活動は低下しているが,行動に関わる一部の領域だけが覚醒することで身体が動く.このことから,「行動には必ずしも意識は必要ない」ということが言える.金沢大学の桜井武教授によれば,「意識というものは,その状況に応じて,適切な行動を選択するという機能と共に,”するべきではない行動を制限する”という意味で大きなはたらきをしている」らしい.つまり意識は行動決定のためのpenalty項としての働きが大きいのではないか,ということである.

(出典: amazon.co.jp)

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ニューロン

脳内に1000億個あるとされるニューロンは,軸索を通じて電気信号を運び,別のニューロンの樹状突起に接続する部分(シナプス)でこれを化学信号に変換(グルタミン酸のような神経伝達物質を放出),信号を伝える.シナプスは一つのニューロンに数千個ある.

(出典: amazon.co.jp)

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